筐体を設計しよう その1 インサートナット

自作の電子工作を作ったとなるとどうしてもケースが欲しい。色々市販のものもあるけれどどうせなら自分で設計して好みのものを作りたい。というわけで3Dプリンタを使って筐体を作ろうという計画を立てた。ここに記すのはその試みの過程です。

さて機器のケースはだいたいそうだと思うけど、表面のパーツと裏面のパーツがあってそれらをネジ止めして組み立てるものである。手元にあるMacBookもゲームボーイもWalkmanもそうなってる。というわけでこの仕組みを作る必要がある。んで色々調べてまず購入したのが熱圧入方式のインサートナットというものだ。試しにAliexpressdでM2とM3サイズを買ってみた。

このインサートナットを表面パーツに埋め込むことで、裏側からケースをねじ止めできるようになるらしい。

だけど届いてみてネジを試しに入れてみたけど全然回らない。引っかかる。おそらくインサートナットとネジを別々に購入したからネジの径はあっていてもスクリューの間隔が違うものと思われる(商品ページにこういう情報書いてないんだよんなあ)。自分の責任なので文句は言えない。次回から気をつけるべきことだ。ただ組み合わせによってうまくいくものもある。謎だ。うまくいかなくても何周かはネジが回るので、一旦ある程度ネジが回った状態の長さで筐体を接合できるという前提で設計してみることにした。

M3はデカ目なので小さい方のM2を使うとして、こっちのナットの長さLは3.9mm、外径OLは2.9mm、内径Dは資料より2mmだった。

接合する際の要は、ネジ頭がどれくらい筐体に引っかかるか。ここがちゃんと引っかからないといくらねじ止めしてもスポッと抜けてしまって意味がない。というわけでノギスでネジ頭の直径を測ったら3.2mmだったのでネジ穴中心から0.6mm外れたところでネジ頭の縁が筐体を引っ掛けることになるとわかった。

そしてスクリューはおおよそ5.5mmの長さで、ナット側に回せるのが約2.2mm。なので残りの3.3mmをネジ側の筐体の厚さとすれば良いことになる。

試しにBlenderで実験用のパーツを3Dモデルを作って「.stl」形式でエクスポートしてCuraでデータを開いてみた。右の板みたいなやつはケースの表面の質感を確認するためのものだ。

フィラメントはPLAを使った。設定も最適なものがわからないのでひとまず適当に設定した。充填率は100%にした。

プリントできたのはいいんだけど、色々と問題があることがわかった。まずネジ穴の円柱部分と土台との境界の接合が弱すぎてネジを回した時に力が加わって取れて外れてしまった。モデリングの段階で境目の内部に意図的に接合用のメッシュを入れた方がいいのかもしれない。

あとインサートナットというのははんだごてで熱圧入すれば良いと聞いたのでやってみたのだけど普段の電子工作用の温度(420度)に設定したままだったので圧入時に周りのPLAが最も簡単にどろっと溶けてしまった。PLAの溶解温度はせいぜい200度なので当然だ。一応入ったけどかなり歪で本番では使え無さそうな感じ。やった瞬間しまったと思ったが遅かった。これは完全に自分が悪い。

溶けたパーツと申し訳なさそうに中に居続けるインサートナット

実験に使ったパーツたち。円柱部分と土台が外れてしまっている。

一応ねじ止めできるんだけど、PLAが柔らかすぎるのか無理に押し込もうとすると割れそうで怖い。もう少し印刷時の設計とかモデルの設計で耐久性を上げたらなんとかなりそうな雰囲気はある。

インサートナット側が熱で溶けて歪んでる。